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東京高等裁判所 昭和55年(ネ)1596号 判決

控訴人

丸浜株式会社

右代表者

伊與田一正

右訴訟代理人

竹下甫

小山稔

被控訴人

破産者堀口みち子破産管財人

森下文雄

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人らは、「原判決を取り消す。控訴人が、破産者堀口みち子に対し、静岡地方裁判所浜松支部昭和五三年(フ)第一二号破産事件につき、準消費貸借金元本債権金九八四万六八六四円及びこれに対する昭和五三年九月二七日から支払ずみまで年7.62パーセントの割合による利息金債権の破産債権を有することを確定する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、控訴棄却の判決を求めた。〈以下、事実省略〉

理由

請求原因事実は、当事者間に争いがない。

そこで、被控訴人の抗弁につき按ずるに、本件破産事件において、訴外みち子に対する破産申立がなされたのが昭和五三年一一月一三日であることは、当事者間に争いがなく、従つて、控訴人主張の連帯保証が、右破産申立の六か月以内になされたものであることは明らかであり、被控訴人が、昭和五五年一月一七日、の原審口頭弁論期日において、控訴人に対し、右連帯保証を無償行為であるとし、破産法七二条五号の規定によりこれを否認する旨の意思表示をしたこともまた記録上明白である。

判旨そして、右規定にいう無償行為であるかどうかは、破産者の立場からみてその行為が無償であれば足り、受益者においても無償であるかどうかは問わないものと解するのを相当とするところ、〈証拠〉並びに弁論の全趣旨によれば、訴外みち子は、義務なくして右連帯保証をなし、これにより何ら経済的利益を受けていないことが認められるから、右連帯保証は、右規定にいう無償行為にあたるものと解すべきである。

控訴人は、保証人には求償権があるので、求償権が保証の対価とみられるべきであり、しかも、本件においては、主債務者である訴外堀口勇は、控訴人に対してその所有不動産に抵当権を設定しており、訴外みち子としては、保証債務を履行したときに右抵当権を取得するから、右連帯保証は無償行為にあたらない旨主張するが、求償権は、保証人が債務の弁済をなしたときに始めて発生するものであつて、保証行為自体によつて発生するものではないから、これをもつて保証行為の対価とはなし難く、控訴人の主張は採用し得ない。

してみれば、本件連帯保証債務は、被控訴人の否認権行使によつて消滅したものというべく、本訴請求は失当として棄却するほかはない。そうすると、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(田宮重男 新田圭一 真榮田哲)

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